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戦略的イノベーションマネジメントの仕組み(2)
(4)主要な成果の概要

イノベーションの失敗原因と対応策

 

イノベーション分野の主要な文献から日本企業、世界の企業におけるイノベーションの失敗原因を抽出したところ、

① イノベーション戦略の欠如、事業戦略との不整合、

② 不確実性を抑制する戦略・仕組みの欠如、

③ 未熟なイノベーションプロセス 

④ プロジェクト/プログラムの管理手法の未整備 

⑤ 経営資源の不適切な配分 ⑥ 硬直した組織と組織能力の不足 ⑦ 市場・顧客の分析能力と学習の不足 ⑧ 経営層の関与不足、不十分なガバナンス、認知バイアス(思い込みや判断の偏り)、⑨ イノベーションガバナンスの欠如、⑩ 外部企業との連携の失敗、⑪ 業績評価のミスマッチが確認されました。日本企業の失敗原因は、世界の企業のそれと概ね同じ内容ですが、未熟なイノベーションプロセスと硬直化した組織と組織能力の不足に起因した失敗が目立っています。

これらの失敗原因を解決する対応策のうち、イノベーションプロジェクトが自身の努力でできる対策は、③、④、⑦の三点でしかなく、これ以外は経営側が環境を整備して、イノベーションプロジェクトが失敗しないよう推進、管理する必要があると考えます。

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                                                            図2 イノベーションの失敗原因の分析

イノベーションマネジメントの世代
日本企業がイノベーションマネジメントの仕組みの導入を検討する際、どの時期の仕組みを目標にすればよいでしょうか? これに応えるために、イノベーション理論の普及やStage-Gateなどのイノベーションプロセスの進化の歴史的をもとに、イノベーションマネジメントの世代を定義しました(表1)。


                                   表1 イノベーションマネジメントの世代別の特徴と仕組みの構成要素

イノベーションプロセスモデルやイノベーション理論の歴史は、1960年代に遡ります。新しいイノベーション理論が発表され、その理論を適用したビジネス例が出現します。その時期に、イノベーションマネジメントに、このビジネスを創出するための仕組みが導入されます。このようなサイクルを繰り返し、現在に至っています。
2000年初頭にオープンイノベーション、破壊的イノベーションが盛んに導入され、第2世代からIBM、3M、P&Gなど先進企業の仕組みが報告され始めます。組織的にも自社の組織横断で、オープンイノベーションの導入を制度化し、組織的な投資リスク管理により、イノベーションを成功に導く点が注目されます。
2010年代は、ビジネスモデルイノベーション、イノベーションエコシステム、デジタルディスラプションの理論を適用したGAFAやユニコーンが巨大化し、プラットフォームを中心に拡大するモデルで、自社はエコシステムのオーケストレーション(調整、実行)を担い、エコシステム全体の推進、運営を実行しています(第3世代)。第2世代相当の仕組みの運用を確立させ、それを社外組織への仕組みの適用。
2020年前から、DXの普及とともに、データ連携、デジタルツインを有する産業エコシステムが出現し、サプライチェーン全体のエコシステムの推進、運営を担っています。第4世代では第3世代の自社が中心となったエコシステムに比べて、管理対象がサプライチェーン全体へと拡大しており、第3世代で確立したエコシステムのマネジメントの運用方法に、デジタルツインとAIを適用し、サプライチェーン全域の統合的管理を可能にしています。
ここで留意するべきことは、日本企業のほとんどが、第1世代で留まっていることです。仕組みの世代ごとに実現できるイノベーションタイプが異なるため、旧世代の仕組みで、高度なイノベーションに挑戦しても成功率は上がりません。付け加えますと、日本企業では、イノベーションが経営管理やオペレーションを含む「仕組み全体」の革新とは理解されていません。サプライチェーンやDXは「効率化・品質向上」の話、イノベーションは「新事業・新市場」と縦割り的に扱われますので、DX投資が「現場改善」に留まり、「ビジネスモデル変革」「価値創出連鎖の最適化」に結びつかない原因になっています。これが仕組みが未整備に留まった原因でもあります。



イノベーションマネジメントの仕組みの構成要素
イノベーションマネジメントの仕組みは、世代によって進化レベルがありますが、仕組みを構成する要素を把握する必要があります。まず、イノベーションの失敗原因に対応して先進企業が採用している施策は、失敗原因のすべてのカテゴリで、経営側が仕組みを用意しています。一方、イノベーションマネジメントの各世代から、その構成要素を整理できます。この2通りのアプローチから、イノベーションの仕組みの構成要素を抽出し、①経営管理レイヤー、②運用レイヤー、③組織レイヤーの三つのレイヤーに配置できます(図3)。各レイヤーの仕組みの役割、機能は、次の通りです。

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                                                     図3 イノベーション仕組みの構成要素

経営管理レイヤー:経営者が企業全体の成長に向けて戦略や目標を定め、不確実性を評価しつつ投資判断やリスク管理を行う仕組みです。ポートフォリオマネジメントやガバナンスを通じ、イノベーション活動を全社戦略と整合させ、資源を最適に配分します。経営層が方向性を示すことで、現場の挑戦と学習を持続的に支える司令塔の役割を果たします。

運用レイヤー:フロントエンドから市場投入、スケールアップまでを対象に、多数のイノベーションプロジェクトを標準化された方法で管理・推進する仕組みです。不確実性の度合いに応じて、ステージゲート、アジャイル、リーンスタートアップなどのプロセスを柔軟に選択・組合せます。効率的かつ確実に成果を創出し、実証実験止まりを避けて持続的な事業化につなげる役割を担います。

組織レイヤー:社内外のイノベーション組織を編成し、探索と深化の両立を可能にする体制を築く仕組みです。人材スキルの養成、心理的安全性の確保、中長期の業績評価制度を通じて挑戦を後押しします。また、外部パートナーやエコシステムとの協働を含めた組織能力強化を図ります。組織そのものが学習し、変化に適応できる能力を高めることで、持続的にイノベーションを創出できる基盤を提供します。

イノベーションマネジメントの仕組みは、この要素が各世代で、進化を遂げてきたと言えます

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戦略的イノベーションマネジメントの仕組み

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